ディーン以降、アメリカのカジュアル性を全面に押し出しだのは、「ハートブレイクホテル」で衝撃的なデビューを飾った、エルヴィスープレスリーぐらいのものである。ただプレスリーは、10万人に一人という声帯をもっていた。類まれなる歌唱力があった。ディーンが10万人に一人という演技力をもっていたとは、とても思えない。エルヴィスは南部で生まれ、黒人たちの歌を白人に結びつけることに成功した。特殊な才能と技量である。それがアメリカ人たちの、とりわけティーンエイジャーたちの抑圧の構造を破壊し、カジュアル思想を抽出した。ディーンに比べ、どちらがビッグだと問われれば、遺されたモノ、あるいは実働時間からいって、大半の人がエルヅイスと答えるだろう。にもかかわらず、ディーンは不滅なのだ。ジェームスーディーンが若くしてこの世を去り、デビュー以来そのほとんどの時間か凝縮されていたため、大衆に分かりやすかったということ、彼の精神性が変質しないまま、永久に凍結保存されたこととも関係があろう。彼は外面内面ともに、マーロン・ブランドとは違って、未だに年をとっていないのだ。アメリカが、ジェームズ・ディーンに年をとることを許さないのだ。だから彼は、今でもフレッシュでカジュアルなのだ。多くのアメリカ人たちにとってディーンは、癌で死んだマックィーン、変死したプレスリー、今や醜く太ってしまったマーロン・ブランドとはいささか事情を異にするのだ。そこが、ディーンの凄いところである。もっと具体的に述べるなら、「ジェームズ・ディーンというカジュアルな役者が、カジュアルウェアを身につけ、カジュアルな映画3本に出演し、カジュアルを求めていた大衆に受け入れられた。彼は私生活もカジュアルそのもので、ポルシェスパイダーという、きわめてカジュアルな車に乗って、その死に方までがカジュアルーデスたった」。その生きざまに、多くのアメリカ人が共感したのである。分かりやすく解説すれば次のようになる。「自由奔放なジェームズ・ディーンという役者が、砕けた服装で、新しい思想のアメリカ的映画3本に出演し、閉塞感からの脱出を求めていた大衆に受け入れられた。彼は私生活も奔放で、その当時、もっとも自由で解放感のあるポルシェスパイダーというスポーツカーに乗って、偶発的な死に遭遇した(偶発的な死のカジュアルーデスという言葉については後述)」アメリカ人たちは、死に至るまでのカジュアルなディーンの生きざまに憧れたのである。おそらくカジュアルという思想には、自由で奔放という意味が含まれているのだろう。ジェームズ・ディーンが、圧倒的にアメリカ人に支持され、現在も支持されている理由は、才能ある役者が若くして劇的に死んだことよりも、彼の死をも含む、カジュアルなライフスタイルだったと思うのだ。
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