人類の長い歴史の中で、男女を問わず太っていて恰幅が良いことは、富と健康の象徴とされてきました。今でも、多くの発展途上国では「肥満体」に人気が集まり、本人もそのことを自慢するケースが少なくおりません。その一方、多くの先進諸国では、栄養の過剰摂取と運動不足による肥満が人の健康を脅かす要因としてクローズアップされ、無視できない社会問題になっています。たとえば、米国内科学会による一九九五年の調査によれば、米国の成人の約六割、が肥満体と見なされ、ハーバード大学の疫学調査(一九九〇年)では、肥満そのものの治療費のほか、肥満によって引き起こされる糖尿病や心臓病、高血圧症、胆石症の治療費が年間で四五八億ドルに上っています(「日経サイエンス」一九九六年一〇/一一月号)。最近の二〇〇三年では米厚生省によると、成人の六五%、一億二七〇〇万人が「太り過ぎ」。うち六〇〇〇万人が「肥満」、さらに九〇〇万人が「深刻な肥満」で、糖尿病関連の医療だけで年間一三〇〇億ドル(一四兆円)に達しています。このような傾向については、日本も例外ではありません。現在、厚生労働省では二〇一〇年をめざして、「健康日本21」という健車づくり運動を展開していますが、肥満が関係する糖尿病や高血圧、虚血性心疾患及び脳血管性疾患の治療に、約五兆五〇〇〇億円という巨費が投じられています。その背景に欧米型の脂肪過多の食生活や運動不足、社会的ストレスの増加などがあることは明らかですが、このままでは日本人の肥満率がますます増大するのではないかと心配されています。そのため、近年は肥満を解消するビジネスの市場が大きくふくらみ、ダイエット志向がOLや主婦層をはじめ、ビジネスマンや中高年男性の間にも広がっています。そして医療機関に「肥満外来」が設けられ、フィットネスクラブやスポーツクラブなどでは、さまざまな生活習慣病を予防する「メディカルフィットネス」が導入され、肥満予防の特定保健用食品や栄養補助食品(サプリメント)などが次に発売されています。これからはさまざまな「肥満予防教室」や、インターネットを活用して自宅で行うフィットネスなどが脚光を浴びることになるでしょう。